小説『朝霧』 九話
正造は自分の年齢を忘れるほど楽しいのだ。遊園地でジェットコースターに二度も乗って、陽子の長い髪が正造の頬をなでると最高の幸せを感じていた。二十年前の青春をいま取り戻している心境になっていた。お化け屋敷に入ると陽子が必死で正造の腕を掴む。感激の時だ。弘子と遊んでいる、そんな気分だった。数時間遊園地で遊んだ二人は充分満足していた。母の消息探しは、しばし忘れていた。陽子も父と遊んだことがなかったから、正造を実の父と思うほど甘えていた。子供の頃から父親と遊びたかったのだ。お父さんと遊んだらこんな感じなのかなあ? 嬉しさが込み上げる。車に戻った陽子の目に涙が滲んでいた。
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