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小説『朝霧』 二十話

 

「武雄兄さん、桜井の娘さん見て、話が出来ないほど緊張して、面白いわ」
再び勝巳に智恵美が話に行って「兄貴会っているのか?」
「うん、鳩に豆鉄砲だわね」
「お前に綺麗、綺麗と言われて、見に行くからだ」と笑う勝巳。
「違うわ、本当に女優さんにそっくりだよ」
「お前も兄貴を陥れるのが上手だな、じゃあ、俺も兄貴の馬鹿面を見に行こう」
勝巳が自分の部屋を出て庭に降りる。そこには赤い顔をした武雄が、引きつった笑いをしているのが見える。
「ほら、兄貴も困っているじゃあないか」
そう言って智恵美に声を掛ける勝巳の声に気が付いて、弘子が振り返って微笑んで会釈をした。
勝巳の息が止まった瞬間だった。
「初めまして、桜井弘子です、子供の時に来て以来ですね」
「は、は、はい」勝巳も固まってしまった。この人が自分の奥さんになるの? 嘘? 頭の中がパニックになっていた。二人は信じられないと、顔を見合わせたが、ライバル心が芽生えた。
一応、候補の二人に会ったので、お茶を飲んで座敷で一雄、智恵子たちと雑談をして二人は帰って行った。

帰ってから一雄が「まだ、若いからもう少し先だろうな、勝巳には小便臭かったのか?」
「……」
「武雄は農協にいい女の子がいるんだったな」
「……」
一雄も久々に見た弘子は綺麗なお嬢さんに見えたから、二人に意地悪いことを言ったのだった。
翌日、武雄も勝巳もこっそりと智恵子に「養子も悪くないと友達が言うので」「養子もいいかも」と言い訳をして、すぐにでも婿養子に行きたいと言うのに呆れた智恵子だった。
武雄と勝巳の弘子獲得合戦が始まったのだ。引き金を引いたのは田宮だったのだ。正造の軽率な一枚の写真が婿養子の話を一気に早めたのだ。婿養子の話をまるで知らない弘子は、卒業と同時に地元の農協に就職が決まっていた。その頃、正造は、もう大学生活が短い弘子に話すきっかけを作ることに焦りを感じていたのだった。
………

数日後、正造にセントラル旅行社から、海外ブライダルの企画は十五年前からの企画ですとの回答があった。同じく陽子にも野々村智也から十五年前からの企画ですとの回答があったが、企画そのものはもう少し前からあったらしいが、正式に募集が開始されたのが十五年前だと教えてくれた。だから他の旅行社よりは実績も経験もあるのだ。是非、祖父母を説得して自分とお付き合いをと希望したのだった。
陽子は正造が好きだから、もちろん智也の話には耳を貸さないのだが、閃(ひらめ)きは感じた。

九月になって、陽子は通学の途中に、正造に会いたいとメールをして、新事実がわかったというのだ、鰻が食べたいとも付け加えていた。
第二週の土曜日に鰻屋の前で正造を待つ陽子、何度も腕時計を見る。若い女性が鰻屋の前で待つ奇妙な光景。正造が来ると、喜んで手を振る姿は子供のような仕草だ。
「お待たせ」
「そうよ、待たせ過ぎよ」
待ったのは五分ほどなのに、大袈裟に言う。それほど待ち遠しかった。お父さん兼恋人だった。
その日の店は客が少なく空いていて、店主が「いらっしゃい、今夜はお嬢さんと一緒だね」
「はい」と答えると「お父さんがなかなか連れて来てくれないのよ」と笑いながら言う陽子だ。
「何しますか?」
「もちろん、蒲焼き二つ、と生ビールです」と即座に答える。正造は陽子がビールを毎回の様に飲むのに驚いていた。
付き出しでビールを飲みながら「何がわかったの?」と正造。
「先日、十五年前からの企画だと聞いていたでしょう」
「はい、私の情報と陽子の情報が同じだったよね」
「それが違うのよ」
陽子は智也の話を自分で勝手に作った。それは正造に会うために、智也の企画はもっと前からあったと言った話を「それより三年前から企画があったのよ」
「何故? 三年も遅れたの?」
「事故があったからよ」
「えー、事故?」
「私はね、それが母の事故かもしれないと思うの。だから、三年以上、本格募集が延びたのよ」
「それじゃあ、お母さん達が企画の実地テストをした?」
あれ? 陽子はそこまで考えてなかったのに、正造が話を付け加えたことで、本当のように喋らなければならなくなった。
「社員が実験に使われたのよ」
「なるほど。それで?」
困り顔の陽子。
「実験だから費用は会社持ちになったのよ」
「何故、お母さんが選ばれたの?」
「美人だから、私に似て」
そう言いながら笑ったら店主が「納得だ、わかるわかる。美人だよね、娘さん」
聞かれているよ。正造は困り顔。
「でも、費用の件、メンバーの件、両方の祖父母の態度、総てに当てはまるね」
「でしょう、これで決まりね」と得意顔の陽子。
鰻が運ばれてきて「生ビールも二杯、お願いします」と言う陽子。
「今の話なら、お母さんは死んでいるよ」
「あっ、そうだった、父も母も叔母さんも生きているのだった」と頭を軽く叩く。
「そう、わかったわ、北朝鮮に拉致されているのよ」
「それは、あり得るね」と正造が言う。最近テレビで何度となく聞く拉致被害者の報道で真実みがある。
ビールがくると「鶏のももの刺身、手羽先」と注文する正造。拉致なら死んではいないから、
戸籍は生きていると納得する二人だった。ビールを久々に飲んだ陽子は酔っていた。
「お父さん、カラオケ行きたいな」
このまま帰らせると電車で眠ってしまうから、危険だと思って近くのカラオケスナックに連れて行こうと店を出て行く二人。まだ時間は七時過ぎだから、大丈夫だろう。そう思った正造だったが、歌を歌い出した陽子は酔った勢いで次々と歌う。最近流行の歌は全くわからない正造。いつの間にか陽子は梅酒をロックで飲んでいた。それを見た正造は驚いて「おいおい、陽子、駄目だよ、お酒飲んじゃ」

「大丈夫よ、お爺さんが毎日飲んでいる梅酒よ」
「違うよ、梅酒は強い酒だよ」
「大丈夫、大丈夫、お代わり」
飲んで騒いで、急に静かになったら酔いつぶれていた。どうしよう、これでは帰れない、ホテルに泊める? 駄目だ。一人で寝ていて酔いが醒めたら、何をするかわからない。だが祖父母が心配しているよね。どうする? タクシーを呼んでもらって自宅に連れて帰ることにする。
酔っ払った陽子を抱き抱える正造。すると首に手を回してキスをしてきた。両手が塞がっている正造はされるがままの状態。初めは頬にしていたが、酔った陽子はもう自分を制御出来ない。
「正ちゃん、大好き」
抱えた首に捕まって唇にキスをした。一瞬だったが、それで満足したのか、タクシーに乗ると眠ってしまった。
五、六分で自宅に到着して「陽子さん、起きて」と言うと「早いわね、もう家なの?」と寝ぼけたことを言う、母親たちに見つからないように抱えて自宅に運び込んだ。
陽子をソファーに横たえ、実家に行って今帰ったと報告をして戻ると、陽子の実家にどのように話をするか考えていた。熟睡の陽子の寝顔はあどけない美少女に見えた。
どう話せばいいのだろう? とりあえず携帯を探して番号を調べなければと、バッグを開くと、紙切れに(正ちゃん、ごめんなさい。今晩泊めてください。自宅には連絡しなくても大丈夫です、事前に話してあります、陽子)と書いてある。何? 酔っ払うのは計画的なの? 正造は呆れてしまう。
来客用の布団を敷き、洋服のまま寝かせられないから、半袖のブラウスとスカートを脱がせて寝かせる。部屋はクーラーの涼しい風が充満してきた。下着姿の陽子を見て、大胆な行動をする娘だと寝顔に絡んだ髪を触ると「正ちゃん、お母さんは忘れてね」と突然言い出した。
寝言だった、正造には下着姿の陽子に全く反応がなかった。綺麗な寝顔にスタイルのいい姿態、興奮するはずが、父親の心境になっていたのだ。
夏の布団を被せて、自分は風呂に入った。面白い娘だなあ。本当に弘子さんは拉致だろうか? 死んでないなら、拉致か海外で生活している。三人が一緒になら拉致以外にないと思うのだった。
陽子をこれ以上好きにならないようにしなければ。もう自分を止められない気がするのだった。陽子は自分のことを好きになっている。会っては駄目だとわかっていても会ってしまうのだ。陽子の顔と弘子の顔が交互に浮かぶ、複雑な正造だ。

 

 
 

 
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